健康・脳科学

【DMN】デフォルトモードネットワークとは? 分かりやすく解説してみます

デフォルトモードネットワーク(Default Mode Network)って単語、最近ちょこちょことは耳にするようになってきました。
しかしまだまだ一般の方にはそれほど普及していないのではないでしょうか?
正直なところ、自分もこれまであまり詳しく知りませんでした。

 

Tommy
デフォルトモードなネットワークって言われても、さっぱり意味が分からないんですけど

 

って感じでしたから(^^;;;

 

たしかにこのデフォルトモードネットワークという概念、なかなかピンと来なくて分かりにくいかもしれません。
しかし脳科学の分野では、このデフォルトモードネットワークが今後かなり重要視されてくる可能性があるんです。
だから脳科学に興味がある人は、この概念を知っておいて損はないと思いますよ。

 

というわけで、今回はそんなデフォルトモードネットワークについて、できるだけ分かりやすく解説していこうと思います。

 

そもそもデフォルトモードネットワークとは

 

このデフォルトモードネットワークという言葉は、2001年にワシントン大学の神経学者 Marcus E. Raichleさんが論文で発表したことから始まります。

 

実はそれ以前から、脳は安静時にも関わらずfMRI(functional MRI)では活動を示している部位があることが観察されていました。

 

「fMRIって何?」って方のために、まずはそちらについても簡単に説明しますね。

 

脳はある課題を実行した際に、それに関連した脳の一部で活動性が上昇し、それに伴って代謝が上昇するということが言われていました。
たとえば「手を動かす」という課題を実行すると、手に関係する運動野(運動をつかさどる脳の部位)が活動するというような感じです。

 

代謝が増える→酸素の消費量が上昇する→脳の血流が上昇する

 

ということになるのですが、脳の血流が上昇している部位が分かれば、脳の活動をとらえられると考えたわけですね。
MRIの中でも脳の部位ごとの血流量を簡易的に調べることができるものがfMRIという撮影条件になります。

 

実際にfMRIをする際には、ある課題を実行してもらい、その間にMRIを撮影するといった感じで行われます。
先ほど挙げた「手を動かす」などはシンプルでよいのですが、「文章を音読する」という課題になるとちょっと複雑になります。

 

① 視覚で文字を見る

② 文字を認識する

③ 文字の内容を理解する

④ 声に発する

 

このような一連の活動をしないといけなくなります。
そうなると、脳の部位でもいろいろな部分の血流が上昇するので、評価が少し難しくなるのですよねぇ。

 

fMRIも面白い話なのですが、ここでは話を戻しますね。

 

Raichleさんたちは、安静時で何も課題を課していないのに、特異的な活動を示す複数の脳領域があることを発見したのです。
そこに対してデフォルトモードネットワーク(DMN)と名付けたのです。

 

つまりデフォルトモードネットワークとは、何もしていない時に主に活動している脳の部分ということになります。
ボーっとしている時にも活動している部位ってことですね。
"脳がアイドリング状態にあるときに働いている部位"と言っても良いかもしれません。

 

さらにその部分というのが、ある課題を課した時には、逆に活動量が低下するということが分かったのです。
ボーっとしている時には働いていて、何かするときにはそこが逆に働かなくなるんですね。
ちょっと面白いと思いませんか?

 

そうしたことから「このデフォルトモードネットワークはいったい何をしているんだ?」ってことで研究が進んでいったのでした。

 

デフォルトモードネットワークに関係する部位

 

デフォルトモードネットワークは以下の部分で構成されています。

 

デフォルトモードネットワークに関連すると言われている部位

・内側前頭前野 (Medial Prefrontal Cortex:MPFC)
・後部帯状回/楔前部 (Posterior Cingulate Cortex:PCC/Precuneus)
・下部頭頂葉 (Inferior parietal lobule:IPL)
・外側側頭葉(Lateral Temporal Cortex:LTC)
・海馬体(Hippocampal Formation:HF)

 

この中でも特に内側前頭前野(MPFC)、後部帯状回/楔前部というのが重要な部分だったりします。

 

マインドワンダリングとデフォルトモードネットワーク

 

デフォルトモードネットワークの働きを実体験するのによい例があります。

 

安静時に「何も考えるな」と指示された場合。
もし時間があれば、1分間でよいので実際にやってみてください。

 

どうですか? 1分間何も考えられずにいられましたか?
やってみると分かると思うのですが、何も考えずにいるのって実はとても難しいことなんですよね。
無意識のうちに、次から次へといろいろなことを考えが浮かんできてしまったりしませんか?

 

このいろいろな考えが無意識に浮かんできてしまうことを

マインドワンダリング (mind-wandering)

と言います。

 

日本語に訳すと"思考のさまよい"と言うことになりますね。

 

このマインドワンダリングをしている時に特に活動性が上がっているのが、先ほど挙げた後部帯状回/楔前部なのです。
つまりマインドワンダリングしている際には、デフォルトモードネットワークがしっかり働いているということになります。

 

逆に何かに集中している場合、いわゆる"フロー状態"の時っていうのは、この部分の活動性が低下しているとのことです。

 

「フロー状態って何?」って方は、以前書いた記事も良ければ見てみてくださいね。

 

フロー状態
全集中のフロー状態に入って作業効率を上げていきましょう

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デフォルトモードネットワークの働き

 

ではこのデフォルトモードネットワークがどんな働きをしているのかというのが気になりますよね。

 

しかし現時点ではデフォルトモードネットワークがどのような脳機能と一義的に関連しているかは不明とのことです。

 

とはいえ、先ほどマインドワンダリングの際に働いているという話がありましたよね。
そんなことから、過去を振り返ったり、将来のことをあれこれ思ったり、自分自身や他者の心理的状態を推察したりなど、内的な思考に関連した処理に関与している可能性が高いと言われています。

 

まだ謎が多い部分ではありますが、今後さらに解明が進んでいくことでしょう。

 

ただこのデフォルトモードネットワークが働いていると、それだけで脳のエネルギーの60-80%を消費していると言われています。
ものすごい消費量ですよね。
だからデフォルトモードネットワークがフルに働いてしまっていると、脳が疲れてしまうようなんです。

 

何もしていないはずなのに、脳が疲れてしまうというのも不思議な話ではありますけどね。

 

デフォルトモードネットワークの制御は重要

 

ある課題を実行すると、デフォルトモードネットワークの活動性が低下すると説明しました。
ではなぜそのようなことが起こるのでしょうか。

 

それについては、どうも脳全体で使用できる資源が限定されているからではないかと言われています。

 

他の部位の活動性が上がると、相対的にデフォルトモードネットワークに割り当てられる資源量が低下するという考えです。

 

だから特に高度な作業をする場合、正確に課題を遂行するためには デフォルトモードネットワークの適切な抑制が必要であるともされています。

 

また作業にある程度慣れてきてしまうと、デフォルトモードネットワークの活動性が上昇してきてしまうとのこと。
そうすると課題へのパフォーマンスが下がってしまうそうです。

 

たしかにある作業を繰り返しやっていると、最初は集中してできていたのに徐々にほかのことを考えてしまったりしませんか?
また他ごとを考えてしまっているうちにミスしてしまったり。
まさにこういう時にデフォルトモードネットワークが働き始めていたということなんでしょうね。

 

そういう意味では、できるだけデフォルトモードネットワークの活動を抑制している方が良いということになりますね。

 

また記憶に関係するワーキングメモリネットワークが活動している時には、デフォルトモードネットワークの活動が低下しているとのことです。
だからワーキングメモリを思いっきり働かせたい場合にも、デフォルトモードネットワークが働かないようにした方が良いということですね。

 

仕事の効率化にも関係してくるワーキングメモリの詳細については、以前の記事も良かったら見てみてくださいね。

 

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瞑想とデフォルトモードネットワーク

 

こうやって見てくると、何かに集中したりするときにはできるだけデフォルトモードネットワークが働かないようにしたいですよね。
そう考えると、自分でデフォルトモードネットワークの働きを制御できれば理想的ですよね。
実はいろいろ調べられたところ良い方法があったんです。

 

それが

瞑想(マインドフルネス)

だというのです。

 

瞑想をすることで、デフォルトモードネットワークの働きを抑えて、脳の休息を取らせることができるというのですね。
さらに必要な時には集中力を高めることもできるようになるというんです。

 

実際に瞑想をすることでデフォルトモードネットワークの働きを抑制しているのをfMRIでとらえたという報告もあります。

 

Meditation leads to reduced default mode network activity beyond an active task

 

また少し前に書店でよく見かけた脳の休息に関する本でも、瞑想とデフォルトモードネットワークのことが書かれていました。

 

世界のエリートがやっている最高の休息法 脳科学×瞑想で集中力が高まる [ 久賀谷亮 ]

 

たしかに

雑念=マインドワンダリング=デフォルトモードネットワークの働き

とも考えられますからね。

 

雑念を抑える瞑想が、デフォルトモードネットワークの働きを抑えるというのも何となく納得ではあります。

 

また先ほど触れたように、脳のエネルギーはデフォルトモードネットワークによってかなり消費されています。
だからそれを抑えることができれば、脳の休息の効果も期待できそうですよね。

 

いろいろと研究中のデフォルトモードネットワーク

 

デフォルトモードネットワークについては、正直なところまだいろいろと研究されている段階です。
ですから、まだ未解明の部分もたくさんあります。

 

ただアルツハイマー病や統合失調症、うつ病、自閉症などとの関連についても触れられてもいます。
デフォルトモードネットワークの活動に異常をきたすと、そのような病気が発症する可能性があるらしいのです。

 

今後さらにそういったデフォルトモードネットワークと病気との関係も明らかとなってくるかもしれませんね。

 

現状ではこのデフォルトモードネットワークは、何かの課題をしているときには活動が低下するということが分かっているというところです。
逆にデフォルトモードネットワークが過剰に働くのを抑えておくことができれば、脳の疲れを軽減させることができる可能性があります。
それによってさらに集中力を高めたりできるのかもしれません。

 

またデフォルトモードネットワークの働きを抑えるには、瞑想は効果がありそうということが分かっています。
ですから瞑想に取り組むのは、集中力を高めるためにも役立ちそうですね。

 

今後もさらに面白い知見が出てくるかもしれませんが、デフォルトモードネットワーク(DMN)という概念については知っておいて損はないと思いますよ。
また面白い話が出てこれば、こちらのブログでも書いていこうと思いますのでお楽しみに。

 

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